2021.08.04
宇宙からの電波で走る?!自社開発の自動運転マイクロEV
自社開発の自動運転、まさかのセンサートラブル?
現在、東海クラリオンとelpisが開発を進めている自動運転車両の実証実験を、岐阜県にある安部日鋼工業岐阜本巣工場の敷地をお借りして行いました。
タイで行われた内閣府による実証プロジェクトの後、国内に場所を移動してからは、これまでで最も広い場所を使用した実証実験です。
私たちの自動運転車両は、日本が打ち上げた準天頂衛星みちびきをはじめとした何台ものGNSSの電波と、車両に取り付けた複数のセンサーを使って走るものなのですが、今回はなんと、当日の朝にハンドルを補正するセンサーがうまく動かなくなるというトラブル発生。
そこで急遽、残りのセンサーと人工衛星の電波のみで走らせることに。
センサー不調でも大丈夫なのだろうかと正直不安を抱えながらも、実際に乗車してみると、はじめは微妙に左右にフラフラしながら動き出した自動運転車両でしたが、何度かコースを走るうちにAIが学習を繰り返し、徐々に軌道ルート補正しながら走って行きます。
ほとんど人工衛星の電波頼りでの走行だったので、多少の蛇行はあれど、ゴール地点まで何事もなく到着してびっくり。これにセンサーがしっかりと加われば、かなりスムーズで正確な自動運転が可能になります。
それにしても、遠く離れた宇宙から、人工衛星の電波だけで走るってある意味、すごい体験をしてしまいました!
人工衛星の可能性を改めて実感しますね。
2019年、ATI社と開発がスタート、タイで人工衛星を使ったプロジェクトに参加
そんな自動運転車両を開発するきっかけは、3年前の、タイと日本を拠点に自動運転車両の開発をしているATI社との出会いにありました。
その後、ATI社と協業し、2019年の内閣府の「みちびきを利用した実証実験」に共同で参加することとなり、本格的に自動運転プロジェクトをスタートさせました。
2019年度のみちびきを利用した実証実験公募に「MADOCA PPP高精度位置情報を使ったマイクロEV自動運転の実証実験」(東海クラリオン株式会社、株式会社アジア・テクノロジー・インダストリー、国際航業株式会社、アジア工科大学院、チュラロンコン大学)として採択され、みちびきを利用したマイクロEV(小型電気自動車)の自動運転実証実験をタイで実施しました。
高度な技術人材を輩出するアジア工科大学院やチュラロンコン大学との密な連携、タイの政府機関である地理情報・宇宙技術開発機関(GISTDA)の協力などが背景にあり、実験と改良のサイクルをスピーディーに動かせる環境が整っていたこともあり、実証実験は上手くいき、自動走行に十分な精度が得られることを確認できました。
マイクロEVだからこそ、ラストワンマイルに展開できる
自動運転の車両にマイクロEVを使用することで、パワーが制限されスピードが出せず、低速かつ狭域で走行するため、カーメーカーの自動運転とは異なるジャンルになります。
低速であることにより、自動制御の難易度は下がり、走行区間を決めてしまえば障害物検知もラクになります。
本来、自動運転車両には、3次元地図データの作成が必要なのですが、本プロジェクトの車両は、簡易的な2次元地図データと準天頂衛星「みちびき」による超高精度測位によって簡便な下準備で車両を走行させることが可能になるため、自動運転車両の導入コストを、どこよりも安くできることを目指しています。
新興住宅地などで暮らす人々の日常の足にできるような、安全で安価な自動走行制御のシステムとして活用できます。
そして最終的には、住民の高齢化が進む日本において、過疎地域のラストワンマイル(最後の1マイル=1.6キロ)車両の開発を目標にしており、また観光スポット内の周遊バスなどへの導入も想定しています。
開発は急ピッチでまだまだ続く、乞うご期待!
これまで2019年のタイでの実証実験後、ゴルフカートを改造して2台開発しました。
ATI社がソフトウェア面を、東海クラリオン・elpisが車両の部品改造等を実施し、完成した2台の内1台は、今年5月にお客様に納品させて頂きました。
また、現在自動運転車両と同メンバーで、除菌液IELUを空間に自動噴霧するAGV(無人搬送ロボット)も開発しています。
そちらの情報も今後発信していきますので、ぜひチェックしてみてください!